アトピー性皮膚炎(あとぴーせいひふえん)

                                    atopic dermatitis

当院のアトピー性皮膚炎の新患数
月/年 1998 1999 2000 2001 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012年
1月 0人 5人 3人 0人 5人 7人 3人 3人 1人 2人 1人 4人 8人 5人 0人
2月 2人 14人 10人 2人 3人 1人 4人 4人 3人 7人 3人 5人 1人 3人 3人
3月 4人 8人 3人 6人 1人 4人 5人 6人 4人 5人 3人 2人 6人 6人 7人
4月 2人 8人 7人 7人 10人 3人 11人 3人 2人 9人 6人 5人 9人 8人 7人
5月 8人 16人 5人 6人 4人 5人 4人 12人 6人 9人 4人 5人 2人 9人 7人
6月 8人 13人 7人 4人 7人 10人 3人 4人 4人 6人 10人 10人 8人 4人 3人
7月 5人 3人 6人 5人 5人 3人 3人 10人 6人 4人 4人 6人 8人 5人 5人
8月 8人 9人 5人 0人 6人 7人 7人 1人 7人 2人 7人 8人 4人 3人 9人
9月 11人 4人 5人 5人 0人 0人 6人 6人 4人 4人 6人 4人 5人 2人 4人
10月 7人 3人 1人 2人 5人 2人 9人 4人 2人 7人 5人 0人 4人 5人 6人
11月 10人 7人 6人 1人 1人 3人 3人 3人 2人 5人 7人 2人 4人 2人 *
12月 7人 7人 2人 1人 5人 4人 6人 2人 0人 6人 2人 4人 3人 2人 *
年間合計 72人 97人 60人 39人 52人 49人 64人 58人 41人 66人 58人 55人 62人 54人 *


アトピー性皮膚炎は湿疹・皮膚炎の仲間で難治で何年間も悩まされます。
しかも時々悪化するのでその都度医療機関を代える方が都会の患者さんほど多いようです。
典型的なアトピー性皮膚炎の患者さんはかゆい湿疹が両肘屈側とか両膝屈側の関節部に出来て、季節の変わり目や夏季や冬季に悪化したりして悩まされることがあります。

その湿疹が慢性再発性に何年も続く場合はそれはアトピー性皮膚炎です。
そしてアレルギー性鼻炎とかアレルギー性結膜炎とか気管支喘息とかアトピー性皮膚炎の家族歴があれば確実にアトピー性皮膚炎です。アトピー性皮膚炎には乳児期・幼小児期・成人期の3タイプがあります。

生後まもなくより満1才ぐらいまでに上半身にじゅくじゅくした湿疹があり全身に左右対称に湿疹が出来ていたら乳児期アトピー性皮膚炎です。
しかし生後半年以下の場合は乳児脂漏性湿疹と鑑別に困難なことがしばしばあります。

2才頃から15才頃まで(幼児期・小児期)は肘や膝の屈側に左右対称に湿疹が出来て全身の皮膚が乾燥し角化肥厚して慢性湿疹のムードになります。
かゆみが強く引っかき傷もみられます。
こんな状態の湿疹が幼小児期アトピー性皮膚炎です。

思春期以後は湿疹のムードは幼児期・小児期と同じですが顔・くび・胸・背中の脂漏部位に赤みを伴う湿疹が強く出現します。
このタイプが成人期アトピー性皮膚炎です。
最近このタイプが特に増加していると言われています。

現在アトピー性皮膚炎と言われている湿疹と全く同じ慢性の湿疹は昔からありました。
今から1世紀以上前の1892年にベニエがベニエ痒疹(べにえようしん)の病名で文献的に詳しく報告しています。
その後ベニエ痒疹と同類の湿疹が屈側性湿疹、晩発性滲出性類湿疹、汎発性神経皮膚炎などのいろいろの病名で呼ばれていました。

その後、コカらによって家系的に発生する喘息とか枯草熱などの遺伝性の過敏状態をアトピーとする考え方を提唱されました。
その考え方を取り入れてアメリカのザルツバーガーがベニエ痒疹などの病名を整理して1933年にアトピー性皮膚炎と命名しました。
このアトピー性皮膚炎という病名はアメリカ医学の影響の強い日本でも使用されるようになり現在に至っています。

本邦では1956年12月発行の谷村忠保氏著の「最新の皮膚病・性病の診断と治療」(永井書店)には簡略ですがアトピー性皮膚炎の記載がみられます。
1960年2月発行の原田儀一郎氏編集の「皮膚病診療図説」(金原出版)にはアトピー皮膚炎のカラー写真が掲載されています。
その解説の中には第1は乳児、第2は幼児、第3は成人に生ずるの記載があります。

1963年7月発行の高瀬吉雄氏著の「湿疹の臨床」(金原出版)にはアトピー性皮膚炎を詳しく解説しています。
コーチングの文献を引用して成人期アトピー性皮膚炎のことも記載しています。
アトピー皮膚炎の3つのタイプ(乳児期、幼小児期、成人期)を詳しく述べています。

第1は乳児期タイプのアトピー性皮膚炎で2才までに多くは治癒して再発しない。
一部は幼児期タイプにそのまま移行するケースと治癒してしばらくたってから再発する場合がある。

第2は幼小児期タイプのアトピー性皮膚炎で10才から12才で多くは治癒して再発しない。
一部は成人期タイプにそのまま移行するケースと治癒してしばらくたってから再発する場合がある。

第3は成人期タイプのアトピー性皮膚炎で30才までに自然治癒する。
稀に30才以降まで残り45才以上に及ぶこともあることを記載しています。
現在私の医院のアトピー性皮膚炎の最高年令は男性50才、女性43才です。

私の医院の50才の男性のアトピー性皮膚炎の患者さんは他の医療機関から数年前に転医して来た患者さんです。
12才に発病してずっとステロイド外用薬でコントロールして現在に到った患者さんです。
この患者さんは再発が心配だから通院されている状態でもうアトピー性皮膚炎の終着駅と考えて良いと思います。
最近は保湿剤外用でコントロール出来てステロイド外用は殆ど必要でなくなりました。

43才の女性のアトピー性皮膚炎の患者さんは1981年以来ずっと診ている成人型のアトピー性皮膚炎の患者さんです。
初診の頃は25才独身で小学校3年に発病し一時消失していて成人になって再発し受診されました。
その後まもなく結婚し現在では3人の子供のお母さんです。

その間アトピー性皮膚炎は大変重い時もありましたがステロイド外用などでなんとかコントロールして現在に到っています。
彼女も現在は保湿剤外用のみで良くステロイド外用の必要は殆どありません。
彼女のアトピー性皮膚炎の終着駅はもう目の前です。

私を信頼して二人三脚の気持ちでずっと治療を続けて頂いてアトピー性皮膚炎の一生を見せて頂きました。
ステロイド外用剤を上手に使用すればアトピー性皮膚炎はコントロール出来ることを証明して見せてくれましたことを心から感謝しています。

本邦で初めてステロイド外用剤の酢酸ヒドロコルチゾンが合成されたのが1951年で許可されたのは1953年10月です。
ステロイド時代の幕開けです。
その後続々と新しいステロイド剤が研究開発されました。

プレドニゾロンが合成されたのが1955年で1956年10月に許可されました。
デキサメサゾンが合成されたのが1958年で1960年5月に許可されました。
ベタメタゾンが合成されたのが1958年で1964年9月に許可されました。

そして現在も有名なケナコルトAが1959年3月に発売、フルコートが1961年9月に発売されました。
さらにベトネベートが1965年12月に発売、リンデロンVが1966年12月に発売されました。
当時の教科書にはステロイドは未知の薬でしたから良く効くが副作用には充分に注意するように記載されていました。

私が大学の教室に入局したのは1965年4月ですが新薬のステロイド外用薬は非常に大事に使われていました。
また入院患者さんに関してはステロイドを安易に使用しないためにステロイド外用薬を使用禁止で治療していました。
ステロイド外用薬に関しては当時は使用量にも厳しい制限があり少量づつ注意して使用したことを記憶しています。

このステロイド外用薬はそれまでの外用薬に比べ画期的な効果を挙げました。
当時ヘブラ型の原発性紅皮症といわれる患者さんがどの病院にも2人や3人は皮膚科病棟の主のようにしていたものです。
この難治性の紅皮症はステロイドの出現のお陰で最近は殆ど見られなくなりました。

アトピー性皮膚炎は歴史的な事実から治癒には年余を要する慢性疾患です。
内科の糖尿病とか高血圧症の治療と同じようにコントロールする皮膚病と考えて対処したらよいと思います。
性急に原因を求めずステロイドを上手に利用して気長に加療しましょう。

アトピー性皮膚炎の原因はあれこれといわれていますが今のところ不明です。
遺伝的体質に関係があることは確かですが重症のアトピー性皮膚炎は何か環境汚染によるものではないかと思っています。

次の事実があることは確かです。

(1)湿疹が夏は汗で悪化する。

(2)湿疹が冬は乾燥と寒さで悪化する。

(3)湿疹が季節の変わり目に悪化します。

(4)皮膚が細菌感染を起こしやすくとびひになったりフルンクロージスになったり続発性紅皮症になったりする。

(5)皮膚がウイルス感染を起こしやすくカポジ水痘様発疹症になりやすい。

(6)湿疹の発症に皮膚の常在のかびの癜風菌とカンジダ菌が関与しているようです。

癌や膠原病などの難病が医療ビジネスや宗教のターゲットによくされます。
アトピー性皮膚炎も今や医療ビジネスと宗教のターゲットの花形です。
その場合ステロイド拒否思想が多いに利用されている現実を憂慮しています。

医者と患者の関係は馬の合う人間関係と同じだと考えています。
特にアトピー性皮膚炎の場合は自分の波長と合う医者を見つけて気長に治療して欲しいと思います。

当院での治療を紹介します。


(1)軽症な場合は保湿剤外用のみで加療します。
保湿剤にはヘパリン類似物質の軟膏・クリーム・ローシヨンあるいは尿素軟膏・クリーム・ローシヨンを主に使用します。
両者に過敏の患者さんはユベラかワセリンを使用します。

(2)中等症以上の場合はステロイド剤を外用します。
この場合ステロイドを使用しない日を必ず作り、抗白癬剤外用を併用するようにしています。
内服に抗アレルギー剤を内服させます。

(3)重症の場合は中等症と同じに扱います。
稀ですがステロイド剤を短期間内用させることもあります。
ポピドンヨードあるいは強酸性水による消毒療法をして頂きます。
さらに漢方薬を併用いたします。

(4)とびひを併発したりできものが出来たり続発性紅皮症の場合は適切な抗菌剤を使用します。
またカポジ水痘様発疹症の場合は抗ウイルス剤を使用します。

(5)毎日風呂に入って頂き、石鹸はマイルドのものを使って頂きます。
夏はシャワーを浴びるか全身を濡れたタオルで拭くかして汗のコントロールをしてもらいます。

(6)免疫抑制剤のタクロリムス水和物の軟膏剤がプロトピック軟膏の名前で12月始めに藤沢薬品から新発売されました。
64%に皮膚刺激感(灼熱感、ほてり感、ヒリヒリ感、しみる、そう痒感など)が認められるとのことですが現在のところ中止した例がありません。
1回の使用量が5gまでとされていますので現在は顔面にのみ使用しています。


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