| 十味敗毒湯による治療例 |
1997・2・16(日) 日本東洋医学会東海支部静岡県部会学術講演会で講演
| 十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)による中毒疹(ちゅうどくしん)と環状紅斑(かんじょうこうはん)の 治療例102例。 |
| 中毒疹(ちゅうどくしん)と環状紅斑(かんじょうこうはん)について |
体外から有害なウイルス・ばいきん・化学物質などが体内に侵入した時あるいは体内で休眠していた
有害なウイルス・ばいきんが再び活動を始めたり、なんらかの原因で有害な物質が体内に発生した場合
皮膚に発疹が出来ることがあります。
その発疹を中毒疹といいます。
広い意味では原因のはっきりした麻疹(はしか)・風疹(三日はしか)・水痘(みずぼうそう)・
伝染性紅斑(リンゴ病)・しょうこう熱・薬疹・しいたけ皮膚炎なども中毒疹です。
原因のはっきりしない多形紅斑・結節性紅斑・環状紅斑・狭義の中毒疹も中毒疹です。
狭義の中毒疹とは原因がはっきりしない麻疹に似た発疹・しょうこう熱に似た発疹・種をばらまいたような
赤いぶつぶつをいいます。
環状紅斑とは環状の赤い発疹のことをいいます。
中毒疹と環状紅斑という皮膚病名はごみ溜的な病名で治療に難渋することがしばしばです。
診断のつかない紅斑症はたいていはこのどちらかに落ち着きます。
| 治療例の検討 |
平成6年と平成7年のカルテを調べたところ治癒を確認出来た中毒疹と環状紅斑は146例でした。
以前から中毒疹・環状紅斑に好んで十味敗毒湯内用と西洋薬内用を併用すると効果があると実感して
いましたが、本当に効果があるかどうかを統計的に調べてみました。
146例の内訳は十味敗毒湯内用と西洋薬内用の併用例が102例、西洋薬内用のみによる例が22例、
外用薬のみが22例でした。
漢方薬西洋薬併用例と西洋薬のみの例を比較検討した結果を検討し、十味敗毒湯が有効であることを確認しました。
検討の内訳は以下のとうりです。
(1)発病の早期に十味敗毒湯と西洋薬を併用すると中毒疹・環状紅斑は慢性化しにくい。
十味敗毒湯と西洋薬の併用例の慢性化例は77例中5例で6.5%
西洋薬のみの例の慢性化例は15例中2例で13.3%
漢方薬と西洋薬併用例の慢性化(6.5%)<西洋薬のみの例の慢性化(13.3%)
(2)十味敗毒湯と西洋薬を併用すると早期に治癒する例が多い。
十味敗毒湯と西洋薬の併用例の早期に治癒した例は102例中23例で22.5%
西洋薬のみの例の早期に治癒した例は22例中4例で18.1%
漢方薬と西洋薬併用例の早期治癒例(22.5%)>西洋薬のみの例の早期治癒例(18.1%)
(3)発病からの経過の長い例に十味敗毒湯と西洋薬を併用すると早期に治癒した例が多い。
十味敗毒湯と西洋薬の併用例の早期に治癒した例は8例中3例で37.5%
西洋薬のみの例の早期に治癒した例は4例中1例もなく0%
漢方薬と西洋薬併用例の早期治癒例(37.5%)>西洋薬のみの例の早期治癒例(0%)
十味敗毒湯と西洋薬の併用例102例の中から以下3例を供覧します。
| 症例 1 |
1994・1・7に受診されたT・Mさんという51才の男性の例です。
T・Mさんは約5年前から冬になると全身のあちこちにかゆい赤くわどった丸い発疹(はっしん)が
発生して悩まされていました。
初診時には約3週間前から出来たかゆい赤くわどった丸い発疹(はっしん)が全身のあちこちに出ていました。
皮膚の症状から環状紅斑(かんじょうこうはん)と診断しました。
脈診(みゃくしん)から脈証(みゃくしょう)は中間証(ちゅうかんしょう)でしたので
十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)を選びました。
テイコク十味敗毒湯エキス顆粒(1包 3g)を1日3回とかゆみが強かったのでかゆみ止めとして
メキタミン錠を1日2回の処方(しょほう)をしました。
発疹にはステロイド軟膏を外用してもらいました。
この処方で7日間内用・外用を続けました。
1週間後に再診された時にはかゆみが無くなり発疹も全く消えていました。
その後環状紅斑の再発はありません。
| 症例 2 |
1995・11・24に受診されたN・Mさんという35才の男性の例です。
N・Mさんは2ケ月前から全身のあちこちに丁度種をばらまいたような軽く盛り上がった赤い細かい
かゆみの強いぶつぶつが出て悩まされていました。
1ケ月前より静岡市内の某皮膚科医院に通院して内用薬と外用薬での治療を受けていましたが
改善しないので当院を訪れました。
皮膚症状から中毒疹(ちゅうどくしん)と診断しました。
脈診から脈証は強でしたので十味敗毒湯を選びました。
十味敗毒湯エキス顆粒T(1包 2.5g)を1日2回とかゆみ止めとしてトリルダン錠を1日2回を処方しました。
発疹にはステロイド軟膏を外用させました。
この処方で7日間内用外用を続けました。
1週間後に再診された時にはかゆみが無くなり発疹も完全に消失していました。
その後中毒疹の再発はありません。
| 症例 3 |
1994・1・7に受診されたN・Iさんという36才の男性の例です。
N・Iさんは6ケ月前からからだに丸い赤くわどった大きな発疹(環状紅斑)が出来ていました。
時々かゆいこともありましたが治療をしないで放置していました。
初診時に皮膚症状から診断は環状紅斑としました。
アレルギー鼻炎で某耳鼻科医院でセルテクト錠とダーゼン錠を投薬されていたので1ケ月間
ステロイドの外用薬で経過を見ました。
ステロイド外用薬に少しは反応して紅斑は軽くはなるのですが完全には消えません。
耳鼻科の薬は止めれないとのことで漢方薬を使うことにしました。
脈診から脈証は中間でしたので十味敗毒湯を選びました。
1994・3・15から耳鼻科のセルテクト錠とダーゼン錠に併用してテイコク十味敗毒湯エキス顆粒
(1包3g)を1日2回で14日分を3回(合計56日分)を投薬しました。
発疹は徐々に軽くなり1994・5・7で完治しました。
その後再発しません。
| 十味敗毒湯の説明 |
(1)十味敗毒湯(じゅうみはいどくとう)のプロフイールと効能・効果
十味敗毒湯は日本で始めて麻酔薬を使って外科手術をした映画やテレビにも登場したことのある
江戸時代の華岡青洲の創案の漢方処方で皮膚病の漢方薬として最も有名です。
十味敗毒湯は医療用漢方として薬価基準にも収載されていますから保険が効きます。
ばいきんによる皮膚病・かびによる皮膚病・アレルギー性の皮膚病などいろいろの皮膚病に広範囲に使用されます。
なお保険で認められた効能・効果は以下のとうりです。
化膿性皮膚疾患・急性皮膚疾患の初期・蕁麻疹・急性湿疹・水虫。
(小太郎漢方)腫物・にきび・フルンクロージスの体質改善。
(2)十味敗毒湯の薬理作用
十味敗毒湯は10種の生薬が含まれています。
サイコ・オウヒ・キキヨウ・センキユウ・ブクリヨウ・ドツカツ・ボウフウ・カンゾウ・シヨウキヨウ・ケイガイの10種です。
十味敗毒湯の組成生薬の皮膚科的薬理作用は以下のとうりです。
カンゾウ・オウヒ・シヨウキヨウ・ケイガイ・ボウフウ・キキヨウ・サイコ・センキユウは体内の毒物を消し去ります
(解毒作用)。
ケイガイ・カンゾウ・キキヨウ・ボウフウは皮膚の発赤や脹れをなくしてくれます(消炎作用)。
サイコ・センキユウ・ブクリヨウ・ドツカツはいらいらを取り去り落ち着かせてくれます(鎮静作用)。
ブクリヨウ・ボウフウ・ドツカツは排尿を促し体内の水分を排泄します(利尿作用)。
サイコ・ボウフウ・センキユウ・ケイガイは細菌の活動を抑えます(抗菌作用)。
サイコ・ボウフウはウイルスの活動を抑えます(抗ウイルス作用)。
ケイガイはかゆみを止めてくれます(止痒作用)。
以上の薬理作用からいろいろの皮膚病に効果があることがお分かりになったことと思います。
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