テイコク香蘇散エキス顆粒の中毒疹への使用例 212例


1999年3月7日(日) 日本東洋医学会東海支部静岡県部会学術講演会で講演したものです。

始めに

体外から有害なウイルス・ばいきん・化学物質などが体内に侵入した時あるいは体内で休眠していた 有害なウイルス・ばいきんが再び活動を始めたり、なんらかの原因で有害な物質が体内に発生した場合に出来た麻疹・猩紅熱に似た発疹を中毒疹といいます。

また原因のはっきりしない環状紅斑も中毒疹の仲間です。
環状紅斑とは環状の赤い発疹のことをいいます。

香蘇散の適応症は胃腸虚弱で神経質の人の風邪の初期と皮膚科的には蕁麻疹(特に魚肉による)に有効とされています。
中毒疹は皮膚症状の目立つ風邪と考えることが出来ますが香蘇散はまさにぴったりの処方と言えます。

香蘇散のプロフィール

(1)香蘇散は中国宋代(1078−1085)に刊行された薬局方ともいわれる和剤局方に収載された処方です。
  同書には春夏秋冬の流行性急性伝染病を治すとの記載があります。

  伝説によると昔ある城中で疫病が大流行のときにこの処方で病人がみな治ったとのことです。
  また文禄・慶長の役で加藤清正の侍医が使用した処方としても有名です。

(2)テイコク香蘇散エキス顆粒の効能・効果: 胃腸虚弱で神経質の人の風邪の初期。(ツムラも同じ)
  コタロー香蘇散エキス細粒の適応症:感冒,頭痛,ジンマ疹,神経衰弱,婦人更年期障害,
                         神経性月経困難症。

香蘇散の薬理作用

香蘇散の組成生薬

ソヨウ,ショウキョウ,コウブシ,チンピ,カンゾウ。

漢方的薬理作用

ソヨウの解表・解魚毒。(発疹を消し、魚毒を消します。)
ショウキョウの解表・解毒。(発疹を消し、毒を消します。)
ソヨウが君薬、コウブシが臣薬、チンピが佐薬、カンゾウが使薬とされています。

西洋的薬理作用

ソヨウ・コウブシの抗菌作用。
チンピ・カンゾウの抗炎症作用。
中毒疹の病因はウイルス性・細菌性・化学物質による炎症です。


香蘇散の有効例212例の年令と性別

212例を年代別にみると20代から60代が中心で最低年令は男性で16才、最高年令は女性で87才でした。
性別でみると男性が57人、女性が155人で女性が男性の約3倍でした。 

有効例212例の年代別・性別内訳
1996年1月−1998年12月
年代・性 総人数 男性 女性
10代 9人 4人(最低令 16才) 5人(最低令 17才)
20代 46人 8人 38人
30代 43人 14人 29人
40代 32人 7人 25人
50代 30人 5人 25人
60代 34人 13人 21人
70代 12人 5人 7人
80代 6人 1人(82才) 5人(最高令 87才)
合計 212人 57人 155人


中毒疹への漢方薬西洋薬併用マニュアル


香蘇散を下記の表のマニュアルに従って使用しました。

紅斑 かゆみ 香蘇散 抗プラスミン剤 抗ヒスタミン剤
(抗アレルギー剤)
ステロイド剤
−か+
++
+++
++ −か+
++ ++
++ +++


原則として発疹にはステロイド外用薬使用しました。
使用した西洋薬は以下のとうりです。
 抗プラスミン剤:トランサミン錠・ニコルダ錠(トラネキサム酸)。
 抗ヒスタミン剤:ニポラジン錠・メキタミン錠(メキタジン),ピロラール錠(フマル酸クレマスチン)。
 抗アレルギー剤:トリルダン錠,アレジオン錠,アゼプチン錠。
 ステロイド剤:クロコデミン錠(ベタメタゾン・マレイン酸クロルフェニラミン合剤)。


有効例212例の中から5例を紹介します。

症例 1


44才の環状紅斑の女性です。
1998年4月頃から右腋窩から右上腕・胸部にかけて斑状の軽く隆起した大きな紅斑がありました。
表面はややざらざらしていて軽いかゆみがありました。
現在までなにも治療せず放置していたとのことです。

初診は1996年7月26日でした。 
テイコク香蘇散エキス顆粒を1包(2.5g)を 朝夕食前で7日間服用してもらいました。
発疹にはプロメタゾンクリーム(ステロイド剤)をつけてもらいました。

1996年8月4日には発疹がやや紅斑がうすくなりました。
さらにテイコク香蘇散エキス顆粒を同量で14日間続けてもらいました。

1996年8月19日になると紅斑部がかさついていました。
そこでテイコク香蘇散エキス顆粒 をさらに14日分続けて服用してもらいました。
外用薬はクリームを止めて軟膏に変更しプロメタゾン軟膏にしました。

1996年9月3日に治癒としましたが約1か月後の10月6日に1週間前から軽く再発したので受診されました。
そこで再びテイコク香蘇散エキス顆粒を7日分服用してもらいました。
1996年10月14日に受診されましたが完全に治っていました。

症例 2


18才の中毒疹の女性で1週間前から顔とくびと四肢に播種状の丘疹性紅斑が出来ました。
かゆみがなかったので放置していたとのことです。

初診は1996年12月2日でした。
テイコク香蘇散エキス顆粒を1包(2.5g)を 朝・昼・夕食前に4日分と
トランサミン錠(250mg) 1T を朝・昼・夕食後に4日分を内服してもらいました。
皮疹にはエクラークリーム(ステロイド剤)を外用してもらいました。

1996年12月6日には治癒しました。

症例 3


60才の中毒疹の女性で1週間前からほぼ全身に播種状に丘疹性紅斑が出来ました。
少しかゆみがあったが放置していたとのことです。


初診は1996年9月18日でした。
かゆみが強くなったので受診したとのことです。

テイコク香蘇散エキス顆粒を1包(2.5g)を 朝・昼・夕食前に 7日分と
トランサミン錠(250mg) 1Tを朝・昼・夕食後 にメキタミン錠 1Tを朝・夕 食後に7日分を内服してもらいました。

1996年9月27日に受診されましたが完全に治っていました。


症例 4


29才の中毒疹の女性で10日前から四肢にびまん性の紅斑が出来ました。
かゆみもあったのですが放置していました。

初診は1996年9月2日でした。
かゆみが強くなったので受診しました。

テイコク香蘇散エキス顆粒 1包(2.5g)を 朝・昼・夕 食前に4日分と
トランサミン錠(250mg) 1Tを 朝・昼・夕 食後 4日分とメキタミン錠 1T 朝・夕 4日分を内用してもらいました。
皮疹にはスチブロンクリーム(ステロイド剤)を外用してもらいました。

1996年9月6日には紅斑の色がややうすくなりました。
同じ処方をさらに7日間続けてもらいました。

1996年9月21日に受診されましたが完全に治っていました。

症例 5


S・N 49才 女性 環状紅斑(ほぼ全身)
49才の環状紅斑の女性で約1か月前から全身に斑状の紅斑が多発していました。
かゆみもあったが放置していました。

初診は1997年12月1日でした。
かゆみが強くなったので受診したとのことです。

テイコク香蘇散エキス顆粒を1包( 2.5g)を 朝・昼・夕 食前 に7日分と
トランサミン錠(250mg) 1T 朝・昼・夕 食後 とニポラジン錠 1T 朝・夕 食後 7日分を内用してもらいました。
皮疹にはプロメタゾン軟膏(ステロイド剤)を外用して頂きました。

1997年12月9日には以前からの皮疹の色が薄くなったのですが、新しい皮疹がまだ出ました。

同じ処方で7日間続けてもらいました。
1997年12月16日にはほとんど軽快していました。
さらに同じ処方でもう6日間続けました。

1997年12月22日に受診されましたが完全に治っていました。

中毒疹治験例212例の検討


1996年1月から1998年12月までの3年間にテイコク香蘇散エキス顆粒を使用した中毒疹患者のうち治癒に至った例が212例でした。
212例のうち179例は中毒疹で33例は環状紅斑でした。

中毒疹治験例212例の 治癒と発病時期
(1996年1月−1998年12月)
治癒と発病時期 発病1W未満 発病1W以上 発病2W以上 発病1M以上 合計
1W未満で治癒 40人 6人 1人 0人 47人 22.2%
2W未満で治癒 63人 22人 6人 7人 98人 46.2%
1M未満で治癒 17人 8人 12人 7人 44人 20.7%
1M以上で治癒 8人 4人 7人 4人 23人 10.8%
合計 128人 40人 26人 18人 212人 100%
60.3% 18.8% 12.2% 8.4% 100%


テイコク香蘇散エキス顆粒を使用した212例のおよそ2割強の47人が1週間未満で治りました。
また7割弱の145人が2週間未満で治りました。

初診時に発病後1週未満の例が6割強の128人,発病後1週以上2週未満の例が2割弱の40人でした。
発病後2週以上1か月未満の例が1割強で26人,発病後1か月以上の例が1割弱で18人もいました。
すなわち難治と思われる発病後2週以上経過している例が2割強の44人です。

発病1W未満の中毒疹へのテイコク香蘇散エキス顆粒使用例
発病と治癒 1W未満で治癒 2W未満で治癒 1M未満で治癒 1M以上で治癒 合計
発病1W未満の中毒疹 40人 63人 17人 8人 128人
31.2% 49.2% 13.2% 6.2% 100%


発病1週未満の場合は治りやすく8割強は2週未満で治癒しています。

発病1W以上−2W未満の中毒疹へのテイコク香蘇散エキス顆粒使用例
発病と治癒 1w未満で治癒 2W未満で治癒 1M未満で治癒 1M以上で治癒 合計
発病1W以上2W未満 6人 22人 8人 4人 40人
15% 55% 20% 10% 100%


発病1週以上2週未満の場合はまだ治りやすく丁度7割が2週未満で治癒しています。

発病2W以上の中毒疹へのテイコク香蘇散エキス顆粒使用例
発病と治癒 1W未満で治癒 2W未満で治癒 1M未満で治癒 1M以上で治癒 合計
発病2W以上 1人 13人 19人 11人 44人
2.2% 29.5% 43.1% 25% 100%


発病から2週間以上経過している例は44人でさすがに難治です。
治癒に2週間以上から1か月未満を要した例が4割強の19人で、1か月以上かかった例が3割弱の11人でした。
しかし香蘇散使用例で3割強の14人が2週間未満で治っているのは注目すべきことと思います。


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