尋常性疣贅554例の統計的考察

平成12年7月15日(土曜)ブケ東海静岡で開催された第67回日本皮膚科学会静岡地方会で講演したものです。

尋常性疣贅で手足に発生したものはウイルス性疣贅の中で最も治りにくいものです。
この度1996年1月から2000年4月まで当院に受診されて治癒あるいは治療中断された手足の尋常性疣贅の554例について統計的に考察してみました。

(1)年令分布と男女比。

年令は1才から81才に渡り、20才未満が50%、50才未満が90%で高齢者は少ない。
性別は男性249人(45%)、女性305人(55%)で女性がやや多い。
年令分布から疣ウイルスに対する免疫がなかなか出来にくい皮膚病のようです。

掌蹠の尋常性疣贅554例の年令分布(1996年1月〜2000年4月)
最高年令81才男、最低年令1才男女
20才未満が50%、50才未満が90%
年令(才)  〜9 〜19 〜29 〜39 〜49 〜59 〜69 〜79 80〜 合計
男性(人) 80 63 38 27 20 10 249(44.9%)
女性(人) 77 80 44 45 24 22 305(55.1%)
合計(人) 157 143 82 72 44 32 16 554(100%)
28.3 25.8 14.8 13.0 7.9 5.8 2.9 1.3 0.2 100


(2)尋常性疣贅患者の転帰

治癒例6割、中断例4割であったが中断例の中には治癒しているケースが多いものと思っている。
多発例は全体の14%で、保険請求点数が250点のものは多く見ても5人に1人の割合であることがわかった。

掌蹠の尋常性疣贅554例の転帰
(1996年1月〜2000年4月)
治癒 353例 63.7% 多発44例(治癒の12.5%)
中断 201例 36.3% 多発32例(中断の15.9%)
合計 554例 100% 多発76例(合計の13.7%)


(3)当院の尋常性疣贅の治療マニュアル

(T)就寝時にスピール膏をイボに貼付し、朝にスピール膏を外させる。
朝にイボにパスタロン10ローション、デルマクリン軟膏、ブレオS軟膏のいずれかを外用させる。
これを原則として1週間続ける。

*パスタロン10ローション(佐藤製薬)は尿素10%ローション、デルマクリン軟膏(ミヤリサン)はグリチルレチン酸親水軟膏は治ったとの報告はあるが共に適応はない。
 ブレオS軟膏(日本化薬)は皮膚悪性腫瘍に適応の薬剤ですが学術的に尋常性疣贅に有効とされている。

(U)原則として1週間後に受診させてピンセット、手術用ハサミでイボ組織を切除する外科的処置を施行する。
処置後に1週間に1回のペースでイボ冷凍凝固法を行う。
痛みで嫌がる患者は外科的処置のみとする。
処置後は必ず何か薬剤を外用する。(ベゼトン液、ブレオ注射液希釈液、ブレオS軟膏など)

*ベゼトン液(健栄製薬)は塩化ベンゼトニウム液0.025%で消毒液、ブレオ注射液・ブレオS軟膏(日本化薬)は皮膚癌などに適応で学術的に有効とされている。

(V)漢方薬(KTS桂枝茯苓丸加ヨクイニンエキス顆粒あるいはヨクイニンエキスコタロー錠)を服用させる。

KTS桂枝茯苓丸加ヨクイニンエキス顆粒は適応はないが尋常性疣贅に学術的に有効、ヨクイニンエキスコタロー錠は尋常性疣贅に適応がある。

(W)子供には「イボイボ飛んでけ。」などのオマジナイをさせる。
成人の場合テープなどに「イボ無くなれ。イボ消えろ」などを5分間録音させてそれに唱和させる。


(4)自然治癒例および自然治癒モドキの例が41例あった。

自然治癒および自然治癒モドキの41例の内訳
初診後放置 2例
パスタロン10ローション、スピール膏投薬し使用法説明 16例(多発3例)
デルマクリン軟膏、スピール膏投薬し使用法説明 17例(多発1例)
3に暗示療法を指示、治療を患者にさせる 2例(多発1例)
3に漢方薬(ヨクイニン含有)を1週間分併用 2例(多発1例)
ブレオS軟膏、スピール膏投薬し使用法説明 2例
合計 41例(多発6例)


症例T I.Y 19才 男性 自然治癒と思われる症例

平成10年12月19日初診。
数日前に左足底に1個の尋常性疣贅に気がついて受診。
左足に水虫様皮疹があったので顕微鏡検査したところ白癬菌陽性。
とりあえず水虫の治療を開始、アスタットクリーム10gを投薬した。
疣贅の治療は3週間後から行うすることを約束した。

平成11年3月2日に再診。
疣贅は完全に消えていた。
その後アスタットクリームを時々外用していて薬が切れたので来たとのことでした。

症例U Y.O 42才 男性 プラセボ効果で治癒と思われる症例

平成8年7月1日初診。
1週間前に右足蹠に1個の尋常性疣贅が発症したので受診。
朝にパスタロン10ローションを外用し、就寝前にスピール膏を貼るように指導しました。
パスタロン10ローション10g、スピール膏1枚投薬。

平成8年7月8日再診。
疣贅は消えていました。

症例V K.R 6才 女性 プラセボ効果プラスアルファで治癒と思われる症例

平成11年12月始めより左足蹠に疣贅が多発。
神奈川県川崎市内の医療機関でいぼ冷凍を平成12年1月10日から3月23日まで週1回、10回の加療を受けた。

平成12年3月28日に初診。
いぼは全く取れていませんでした。
翌日からブラジルのサンパウロに行くとのことで、お父さんに治療法を教えました。
お父さんには真面目にやれば必ずいぼが取れるので取れたらメールを下さいと約束しました。

(治療法)
デルマクリン軟膏5gを2本、スピール膏10枚を投薬。
就寝前にスピール膏を貼付し、朝外してデルマクリン軟膏を外用させました。
そして子供には「イボイボ無くなれ」のおまじないをさせました。

平成12年4月27日にサンパウロから1週間前にいぼがとれたというお父さんの喜びのEメールを受け取りました。


症例Tのケースは完璧な自然治癒です。(上表の1)

症例Uのケースは外用薬の暗示効果で治ったケースで、プラセボ効果で治癒したものです。
プラセボとは偽薬ともいいます。(上表の2)

症例Vのケースは外用薬の暗示効果に加えておまじないの力がプラスアルファとして働いたものと思います。(上表の4)

その他にプラスアルファの働きをするものには次にあげるものが考えられます。

*医療機関で使うインパクトのある薬剤(癌に効く薬、値段の高い薬、漢方薬など)。
*医療機関で行う注射。
*医療機関で行う外科的処置(いぼ冷凍凝固法など)。
暗示療法(いぼとり神様・仏様も含む)
*民間療法で行うイチジクの汁の外用。


(5)外科的処置(いぼ冷凍凝固法など)による治療結果。

(T)治癒に要したいぼ冷凍凝固法の回数。

1回の冷凍で2割治癒、4回の冷凍で5割治癒、10回の治療で9割治癒。
最高冷凍回数は45回。
冷凍凝固法250点請求の最高は35回で8か月でした。

治癒に要した冷凍凝固法276例の回数
4回の冷凍で5割治癒、10回の冷凍で9割治癒。
冷凍回数 〜7 〜10 〜15 〜20 〜25 〜35 〜45 合計
例数
(%)
56
(20.3)
40
(14.5)
29
(10.5)
21
(7.6)
30
(10.9)
30
(10.9)
36
(13.0)
14 276
多発例 1(a) 1(b) 1(c) 30


(U)治癒に要した手術用ハサミとピンセットによるいぼ切除の処置の回数。

5回の処置で5割治癒、10回の処置で8割治癒。
最高31回の処置で11か月で治癒。

治癒に要した無冷凍例58例の処置回数
5回の処置で5割治癒、10回の処置で8割治癒。
処置回数 〜7 〜10 〜20 〜31 合計
例数
(%)

(8.6)

(8.6)

(12.1)

(13.8)

(10.3)

(12.1)

(13.8)
11

58
多発例


(V)治療例の治癒に至った期間。

5割は2か月未満で、9割は5か月未満で治癒。
最長が1年2か月の1例であった。

369件の治療例の治癒に要した期間
5割は2か月未満で、9割は5か月未満で治癒。
治療期間 1W〜 2W〜 1M〜 2M〜 3M〜 4M〜 5〜9M 10〜14M 合計
例数
(%)
41
(11.1)
61
(16.5)
96
(26.0)
76
(20.6)
40
(10.8)
22
(6.0)
25 369


(6)再発例が24例あった。

4回再発した例が2例、自然治癒したのに再発した例があった。

掌蹠の尋常性疣贅の再発例24例の内訳
症例W 4回再発した例。 症例X 自然治癒で再発した例。 
年令 成人 10例(最高 77才女性) 小児 14例(最低 7才女性)
個数 多発 13例(小児4例) その他 11例
再発回数 4回 2例 2回 22例


症例W A.E 26才 女性 4回再発した症例

平成8年11月6日 初診。
1か月前に両手掌にいぼが多発して受診。
パスタロン10ローション、スピール膏投薬。
いぼ冷凍凝固法5回と処置1回施行。
平成8年12月24日に治癒。
(3か月ブランク)

平成9年4月7日 初診。
2週間前に両手掌に1か所づついぼが発生して受診。
パスタロン10ローション、スピール膏投薬。
いぼ冷凍凝固法4回施行。
平成9年6月3日に治癒。
(3か月ブランク)

平成9年9月13日に初診。
1週間前に左手掌に1か所いぼが発生して受診。
パスタロン10ローション、スピール膏投薬。
いぼ冷凍凝固法1回と処置1回施行。
平成9年10月15日に治癒。
(7か月ブランク)

平成10年6月1日に初診。
1週間前に両手掌に1か所づついぼが発生して受診。
パスタロン10ローション、スピール膏投薬。
いぼ冷凍凝固法1回と処置4回施行。

症例X M.M 13才 男性 自然治癒で再発した症例

平成9年3月8日初診。
2か月前に左足蹠に1か所いぼが発生して受診。
デルマクリン軟膏5gとスピール膏1枚投薬して治療法指導。

平成9年3月15日再診
いぼは完全に消えていた。
その後平成9年7月26日にも確認。
(1年5か月のブランク)

平成10年8月31日初診。
1週間前に左足蹠に1か所、右足蹠に2か所のいぼが発生して受診。
いぼ冷凍凝固法2回施行後治療を中断してその後受診なし。

まとめ

(1)年令は1才から81才に渡り、20才未満が50%、50才未満が90%で年寄は少ない。

(2)性別は男性249人(45%)、女性305人(55%)で女性がやや多い。

(3)治癒例が353例(64%)、中断例が201例(36%)で中断する人が多い。

(4)自然治癒および自然治癒モドキが41例(治癒例の11%)あった。

(5)冷凍凝固法4回で5割治癒、10回で9割治癒、250点請求の最長が8か月でした。

(6)冷凍なしで5回の処置で5割治癒、10回の処置で8割治癒した。

(7)外科的治療で5割は2か月未満で、9割は5か月未満で治癒、最長が1年2か月で1件でした。

(8)再発例が24例(4.3%)あった。


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