太郎坊大権現・いぼ神様
〜静岡県菊川市下内田(高田)〜
2006年6月29日(木曜)更新


いぼ神様・仏様に常日頃から興味を持ってくれている製薬会社M(株)のMRであるYさんが同僚の方が撮影してくれた菊川町にある船見山太郎坊大権現(ふなみさんたろうぼうだいごんげん)の10枚の写真を持ってきてくれました。太郎坊大権現がいぼ神様であることはまちがいないが、頂いたどの写真がいぼ神様かはっきり分からなかったのでゴールデン連休を利用し確認のために訪問取材に訪れました。目的のいぼ神様の太郎坊大権現は東名高速道路菊川インターチェンジを降りて右折し、県道47号線を浜岡町方面に南下し小笠町上平川交差点を右折して高田橋を渡った左手の下高田にあります。太郎坊の本堂の真裏のお宅を訪ねて太郎坊のことを尋ねたところ、高田橋近くにある「ふなみや」さんというお店の横山さんご夫妻を訪ねれば詳しいと伺い早速訪問取材させて頂きました。

高田橋の西岸の袂に
ここより1町の道しるべ
太郎坊大権現札所の
船見屋さん御夫妻にインタビュー


「ふなみや」さん御夫妻は気軽に取材に応じて下さり、太郎坊大権現に関して詳しく説明し太郎坊縁起の資料も下さいました。太郎坊大権現(通称太郎坊様)は菊川町下内田(しもうちだ)下高田(しもたかだ)地区の住民で管理していて、もちまわり当番で本堂の鍵を管理しています。太郎坊大権現の御本尊は木像の約30cmの仏像で本堂中央の御厨子の中に納められています。御厨子は未年の10月24日の大祭の日にのみ開帳されるので常時御本尊を拝顔祈願することは出来ません。御開帳は12年に1回とのことで、たまたま2003年が未の年に当たっていて御本尊にお目にかかれます。毎年1月・7月・10月の24日が大祭で、毎月24日に例祭が行われ、近くのお坊さんにお願いしてお祭りしているそうです。

太郎坊大権現の本堂 中央の御厨子の中に
御本尊が安置されています


太郎坊は京都の愛宕山とか駿河の富士山の主として有名な日本一の大天狗(だいてんぐ)のことです。太郎坊大権現の言い伝えによると遠江西郷の里に縁あって太郎坊が750年程前に住みついたそうです。その後約550年前に西郷の里の堂守であり高田の出身であった笛の名手が笛の音で太郎坊を虜にして当地に引き連れて来たといわれています。古文書によると江戸時代の1666年(寛文6年)、1682年(天和2年)、1717年(享保2年)、1857年(安政4年)の4回と明治時代の1871年(明治4年)、1880年(明治13年)、1882年10月(1882年)の3回の本堂再建の記録が残っています。それが1944年12月7日(昭和19年)の東南海地震で倒壊し、1955年10月(昭和30年)に再建され現在にいたっています。太郎坊は1891年(明治24年)から神社に与えられる仏教の教えに基づいた最高のお墨付きといわれている大権現を賜りました。いつのころからかいぼ神様として信仰を集めています。祈り方は自由で自分なりに祈ればよいとのことで、いぼが取れたら年の数の大豆を奉納します。

いぼが治ったら
年令の数の大豆を奉納
札所で発行してくれる
太郎坊大権現のお札


いぼがとれたという方が沢山いるとのことですが、その他安産、諸病平癒特にガン封じを祈願される方も多く、最近は入学祈願、商売繁盛の神様としても参詣する方が多いそうです。船見山の称号から漁の神様として昔から榛南地方に沢山の信者がいます。「ふなみや」さんは船見山太郎坊大権現の札所をされていて太郎坊大権現のお札を発行して頂けます。いぼ神様についての祈り方など立ち寄って尋ねられたらいかがでしょうか。太郎坊の御真言は「おん うんだら さらだや ありまやてんぐん すまいん そわか」です。(2002年5月9日記)

後日談

ある日天狗様の管理をされている船見屋さんのご主人から葉書を受け取りました。「過日ウイルス性いぼが手に1か所足に1か所出来ました。特に足は痛くて困るので太郎坊様にお祈りをして昔からいぼとりの民間療法として有名な無花果(いちじく)の汁をつけたところたちまち治ってしまいました。治るというよりも本当に剥ぎ取れるように落ちてしまいました。」との嬉しい便りでした。日ごろからの船見屋さんのご主人の太郎坊天狗様への強い信頼感に加えて、無花果の汁をつける民間療法がきっかけで免疫系が賦活されて疣ウイルスに対する免疫が成立したものと思います。

船見山太郎坊大権現へのアクセスGoogle Map

連絡先 船見山太郎坊大権現札所 船見屋
     〒439ー0034 静岡県菊川町下内田(高田)3259−1
     電話 0537−35−3965

JRで

新幹線JR掛川駅で東海道新幹線下車し、東海道線に乗り換えます。JR菊川駅下車、静岡鉄道バスで上平川で下車し県道47号線を右折して徒歩500mほどで太郎坊に着きます。

マイカーで

東名高速道路菊川I.Cを降りて右折して県道47号線を浜岡町方面に南下します。3kmほどで隣町の小笠町上平川に入ってすぐの上平川交差点で右折して500mほどで菊川に架かる高田橋を渡ります。高田橋を渡ってすぐに左折すると右手に太郎坊の石碑がたっていて400mほどの右手が太郎坊大権現です。

天狗(てんぐ)について

中国では流星とか山獣の一種とされ、仏教では夜叉とか悪魔と思われていましたが、日本に入って来て修験道と結びつき勧善懲悪、仏法守護を行う山の神になりました。天狗の中で位の高い天狗を大天狗(だいてんぐ)といい、八天狗(はってんぐ)が有名です。大天狗の筆頭が太郎坊(たろうぼう)といわれ京都の愛宕山あるいは駿河の富士山に住んだとされています。日本国語大辞典によると室町時代の御伽草子に「大唐より是害坊(ぜがいぼう)と申す天狗の首領、日本へ来たれり」と掲載されています。また太郎坊と善界坊を主役(シテ)とした善界(ぜがい)というコミカルな能があります。太郎坊札所で頂いた資料によると「中国の天狗の首領の善界坊(*ぜんかいぼう)が日本の愛宕山に降り立ち、愛宕山に住む太郎坊が案内役になって全国行脚をし、途中高野山で弘法大師の「衆生救済」の教えを受け大唐に帰りました。その後名実ともに日本一の大天狗になった太郎坊は750年ほど前に縁あって遠江の国の西郷の里に住みつきました。
*地元では善界坊をぜがいぼうと言わないでぜんかいぼうと言っています。

トップページへ戻る