いぼとり神様・仏様 取材ノート NO.3
六部と空木(宇津木)の木とイボ神様 (静岡県浜松市)
浜松市西塚町と積志町はそんなに遠くはありません。2つの地区にウツギの木にまつわるイボ神様の話がありそれぞれイボ神様がまつられています。
両地区ともイボだらけの六部の話です。
<西塚町長久寺>
イボだらけの六部が村人に一夜の宿を乞いましたが醜い姿に誰も泊めてくれませんでした。
行者は仕方なく近くに捨ててあった籾殻の上に疲れた身を横たえましたが、余りの寒さに「もう1升の籾殻があったら暖かく眠ることが出来るであろう。」と悲嘆にくれました。そしてそのまま翌朝死んでいました。
杖には「私を祭ってくれるならいぼとりの願いを聞いてあげる。その代わりイボがなおったら1升の籾殻を供えてもらいたい。」とありました。
村人はその非を悔いてその杖を建てて手厚く葬りましたが、やがて杖から芽が出て宇津木の木になりました。
それから後はいぼ神様の宇津木大明神として信仰されています。
宇津木大明神はいぼ神様として有名で、4月の第1日曜日が例祭日です。
<積志町橋爪西地区>
昔々イボの沢山出来た六部が近くの村の家々に施しを求めて、宿を求めましたがイボが沢山出来ていたので気持ち悪がって誰も宿を貸しませんでした。
この六部が花の木村にやって来た時に、花の木村の村人はイボだらけの六部をいやがらずに親切に宿を貸しました。
六部は村人の親切に感謝してお礼に花の木村を去る時に空木の木を植えていきました。
以来この空木の木に触るとイボがとれるということになって村人は祠を建てて六部をまつりました。
それが花の木のいぼ神様の始まりで、イボの取れた人はお礼の印にモミガラを1升お供えしました。
いぼ神様の御祭礼は毎年4月の第一日曜日に行われています。
二つの話はとても似ています。同じ六部が歩いて行ったのでしょうか。それとも民話が旅人によって違って伝わったのでしょうか。
私がとても好きなのは六部が親切にされた方にも、されない方にも、どちらにも優しくイボが取れるようにしてくれたことです。
御祭礼が両方共毎年4月の第一日曜日というのも面白いことですね。
地区の人は他のいぼとり神様にはあまり関心がないようです。
このように近くの地区は同じようなイボ神様が多いようですが、旅人の話が伝わったこともあるでしょうし、自分達の地区にも神様が欲しいと作ることもあったようです。
神奈川県山北町なども道祖神が近くにありどちらも縄で縛るという同じ祈りです。
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